「夏化粧」

池上 永一∥著 文芸春秋

 これも沖縄県立図書館で借りてきた本。文庫になるのを待っていたけどなかなかならないので(笑)。

 石垣島らしい南の島が舞台。産婆のおばぁが息子にかけた、姿が見えなくなるおまじないを解くためにがんばる、若い母親の話。

 思わず笑ってしまう、方言(一部カッコ書きで日本語訳あり)の会話、あっさり「神様」が出てきたりするところ(またこの「神様」がとぼけた、親近感のわくキャラだったり)、全然しめっぽくない葬式の場面、等々はいつも通り。

 、に加え、重くなりがちな内容にも関わらず、読んだ後にからっとした爽やかさが残った。物語の舞台となる、島の岬から見える、よく晴れた初夏の青空が目に浮かぶよう。必要以上に「感動の名作!」ではなく、ちょっと「ほろっ」とする程度の後味が気持ちよい。