「キラマガツー 慶良間の鰹一般釣り」

兼島 秀光∥著 ボーダーインク

 沖縄料理は「味くーたー」。だしをよく使う。公設市場に行くと鰹節がたくさん売られている。
 昔、慶良間の鰹節「キラマガツー」は、品質がよいことで有名だったそうだ。この本は、渡嘉敷島で鰹節作りが盛んだった1950年代、中学卒業と同時に鰹漁船の乗組員となった著者の体験談である。

 「もの書き」専業でない著者が当時の日々を、素直な言葉で、いきいきと語っていて読みやすい。船で働く人々の、活気のある様子が目に浮かぶ。

 著者の兼島さんは、略歴によるとかなり波乱に満ちた人生を送られてきたようだ。鰹漁船を3~4年で下りた後は一度那覇に出た後、島に戻り、漁業組合に就職、その後、再度那覇に出て、土木業に従事したり、「ゲンキ乳業」(現沖縄森永)に就職したりした後、タクシーの運転手をしている。
 この本の中では(意図的に?)まったく語られていないが、戦争体験者でもあり、沖縄タイムスの戦後60周年特集記事に生々しい証言を寄せているのも、この兼島さんと思われる。
 こういった人生を送ってきた人が、過去、それも十代の若い頃を振り返って書いている文章だからこそ、の味もあり、懐かしさのようなものを感じる。

 慶良間で鰹節産業が盛んだったということを、この本を読むまで知らなかった。渡嘉敷島には時々行くが、そういった気配は全く感じられない。夏になると海水浴の観光客で賑わうあの島で、鰹工場がフル稼働していたなんて、不思議な感じ。今後、トカシクビーチから海を眺める度に、大漁旗を揚げて帰ってくる漁船を想像することになるかもしれない。