「ナミイ! 八重山のおばあの歌物語」

姜 信子∥著 岩波書店

 少し前に「ナミイと唄えば」という映画が(県内の1映画館だけ、とかだったかもしれないけど)公開されていて、気にはなったのだけど結局行けなかった。、ということもあり、見つけた時に迷わず手に取った一冊。

 「ナミイ」こと新城(あらしろ)浪さん、この本が書かれた時点で85歳。9歳の時に石垣島から、那覇市辻の遊郭に売られてから、激動の人生を歩んできた。まともな学校教育は受けていないので、カタカナくらいしか読み書きできないけれど、いつも手元に三線があり、沖縄だけでなく、台湾の歌も、日本の歌も、なんだって体に染み込んでいる。即興も早弾きもお任せ。
 そんな彼女のこと、彼女との旅の様子、などを、著者の姜さんが自由に書いている。愛情と尊敬が感じられる文章。

 著者が自由に書いているので、読む方も、人それぞれの読み方があると思う。
 私は少しだけ「しまうた」をやっているので、本の中でナミイの歌う歌の、いくつかは知っている。沖縄・八重山の民謡は元より、昔の日本の流行歌、「籠の鳥」「ラッパ節」「さよなら港」なども、先生のアルバムに入っていたりして、馴染みがある。それだけに、このおばあに「おともだちになろうねぇ」と言われ、一緒に歌い、遊べる著者のことが、ひどく羨ましい。だって、本当に楽しそうだから。

 歌ってカミサマや人間を喜ばせ、喜びの力で寿命を延ばし、ヒャクハタチ(120歳!)まで生きたい!というナミイおばあ。本当に長生きして欲しい。そして、私も、ぜひ一度ライブを聞いてみたいと思う。